西武沿線完歩の旅(2007/9/2~12/16)その13

2007/11/10 南大塚→安比奈 3.2km(歩行距離9.3km)

13時35分 川越市南台三丁目

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雨上がり、南大塚駅構内のゼロキロポスト。

安比奈線を訪れるのは18年ぶり。しばらく訪れない間にメジャーになったなぁと思っていたら、2009年のNHK連続テレビ小説「つばさ」の舞台となったことで、一時すっかり観光地と化していた。そんな休止線を今日は行く。

13時37分 川越市南台三丁目

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駅前の案内板「大東味覚と民話の里」には、しっかりと「安比奈線」の記載がある。また連ドラの時期には駅構内にも、お手製の観光マップがしばらく掲示されていた。安比奈線はこの大東地区を、真っ二つに横断する。

13時39分 川越市南台二丁目

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南大塚を出るとすぐ、線路は左カーブで新宿線から分かれる。市道の整備にあたって将来の計画位置に移設した踏切道だけが、前後の線路と切り離されて不思議な光景を作る。

こういう先行投資だとか約束事だとかがあって、西武も市や県も上げた拳を振り下ろせないでいるのかなぁなんて思ったりもする。

13時45分 川越市南台二丁目

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南大塚から国道16号までの区間、線路はしばらく柵に囲まれた雑草地帯を行く。

西武安比奈線は、入間川の川砂利運搬を目的として1925年に開業した貨物支線。その後1967年に川砂利採取禁止から休止線となるも、その後新設車両基地の引込線として俎上に上がりつつ、少子高齢化の影響等で1995年に計画は無期限延期となった。

13時51分 川越市南大塚二丁目

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線路は間もなく、交通量の多い国道16号と交差する。18年前にはアスファルトの間から線路が覗き、警報機もカバーがかぶせられた状態で保存されていたが、その後車道部分の線路は撤去され、警報機は台座部分のみが敷地内に残されていた。

13時56分 川越市豊田本

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ここからしばらく、線路は北西に向け住宅地の中を行く。今では厳重に封鎖されてしまった線路敷もこのころはガードが甘く、脇から回ると簡単に入ることができた。線路敷はまるで、近隣住民のガーデニングコンテスト…。

駅から続いた住宅地は一本の川を境に途切れ、風景は広々とした農村地帯へと一変する。

14時0分 川越市南大塚一丁目

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この付近で線路は二本の河川を渡るが、そこには赤茶色に錆びついたガーダー橋が架けられている。18年前にはおっかなびっくり枕木の上を歩いて渡ったものだけど、今では枕木の間隔もだいぶまばらになってしまった。

今日は市道を大きく迂回しつつ、民家のガレージの隙間からわずかに橋梁の姿を確認する。

14時5分 川越市大袋

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沿線はところどころミニ開発が行われているものの、広大な農業地帯を横切る安比奈線は、どこかのローカル私鉄と言われてもおかしくない。こんな風景を機関車が横切るなんて、想像しただけでも楽しくならないか。

とはいえ道路は畑を巻いて線路からどんどん遠ざかってしまうため、畦道のような未舗装道路を通って線路へのアプローチを試みる…。

14時7分 川越市大袋

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農業地帯だけあって、枯れているものも多いが、いたるところに小さな水路が作られている。その中のひとつを越えるここはどうやら、枕木を抜いて柵代わりに使ってしまっているよう。こんなものでも、何か意味はあるのかな。

14時11分 川越市大袋

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畑をまっすぐに貫いた線路が森へと吸い込まれる風景は、以前は住宅もほとんどなく休止線のハイライトとも呼べるものだった。市はこのあたりに新駅を設置、複線化のうえあわよくば入間川を渡って的場への延伸と、まぁよくぞ妄想したものだ。

このころ線路右手では分譲住宅の造成が行われており、さらに現在では左手にも住宅、さらに霊園まで拓かれていて、今訪れたらまた全く印象の違う風景なのかもしれない。

14時19分 川越市池辺

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そして線路は、池辺の森へと足を踏み入れる。緑に覆われたこの区間は、夏の木漏れ日、秋の落葉と、季節によって様々な顔を見せる。ただこの18年の間に森を削り取るように西武運輸のターミナルができており、線路からその姿が見えてしまうのは興醒めだ。

ただ西武がこのあたりに土地を用意して車両基地を作ろうと思っていたことは、その光景を見ると確信を持ってわかるよね。

14時22分 川越市池辺

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道路を一本渡って、線路はまだ森の中に続く。その入口付近で枯れた水路を渡るのだが、雨上がりの今日、何と水路は白色の水を煌々とたたえ渡渉困難な状況に…。橋代わりに置かれた木材も、流出する寸前といった状況でとても渡る気にはなれない(笑

14時23分 川越市池辺

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水路を渡る橋梁は錆と言うより腐食が進み、層状に剥離してもう本来の強度はなさそう。鋼鉄の表面には苔も生し、人工物と言うより古木のようにも見えてくる。

この先線路は左カーブで森を抜けると、1993年に架設された八瀬大橋取り付け部の擁壁に突き当たり一旦終点となる。しかしその先で復活し、左手に砕石プラントを見ながら河川敷を進んで終点の安比奈駅に辿り着く。

14時33分 川越市池辺

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…とわかっているため(笑、今日は水路の手前から市道を迂回し、安比奈駅へ直接アプローチを図る。

八瀬大橋南口交差点の南東角では、一般立ち入り禁止の安比奈駅方面へのアプローチ通路が工事中だった。車両基地と絡み話題になった通路だけど、出来上がってみれば砕石工場へのバイパスルートだったよう。

14時53分 川越市増形

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安比奈駅にアクセスする道路のうち北と南は、工場に出入りするトラックの通り道になっている。そのため東からの道を探しながら、田園のこんな道を歩いて行く。写真右奥では採石工場が、土曜日の今日も稼働していた。

公有地と民有地の境界が曖昧でもあるので、慎重にタイミングを見て入間川の堤防を越える。その向こうには安比奈駅が待っているはず…が、現れたのは背の高さほどの草むらと、水たまりでぬかるんだ泥道の姿…。

15時0分 川越市安比奈新田

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ここを再訪するのも正直面倒なため(笑、水たまりを避け、草むらをかき分け感覚だけで安比奈駅を探す。見つからない不安を感じ始めたころ、ツタに覆われながらも明らかに樹木とは違う一本の柱が姿を見せる。

18年前の記憶があるから間違いない、あれが安比奈線終点の架線柱。

15時13分 川越市安比奈新田

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安比奈駅構内は、自然に浸食されすっかりその様子を変えていた。線路は草や泥に覆われ、架線柱は緑の円柱と化している。その姿はまるで、人間が近づくのを拒んでいるかのよう。

15時16分 川越市安比奈新田

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時々通過するオフロードの車やバイクを避けながら、駅入口あたりの水管橋まで北上してみる。水管橋と線路の交差するあたりにはフェンスに囲まれた小屋があり、何かと思って覗いたら捕獲した野犬のオリ…(笑

安比奈駅周辺は、死角が多く身の危険を感じるようなところ。そもそも私有地で立ち入り禁止の区画もあるだろうし、もう今の時代訪問するのはおすすめできないな。

15時32分 川越市増形

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ここからの帰り道が、またかったるいんだよね…(笑

休止以来半世紀近くが経ち、安比奈線の線路はもはや「線路」と呼べない程度に劣化が進んでいる。再訪するとしたら車両基地整備が動き出すころと思ってたけど、その後の新宿線の現状維持若しくは縮小傾向を見る限り、その日が訪れることはなさそうだ。

最後に1989年の写真をいくつか…。

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まだ線路が車道を横断していた、国道16号との交差地点。2007年現在でも、歩道部の線路は残っていた。それにしても、車のデザインとか太陽神戸銀行とか…。

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枕木が抜かれていた橋梁をほぼ定点観測で。まだはっきりしていた線路敷が、自然に飲み込まれ曖昧になっていく様子がわかる。

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そして、草むらと化す前の安比奈駅…。本当に、時間の流れは正直だ。


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