西武安比奈線…跡(2018/3/21)

11年ぶりに訪れたここだけど、それも今日で最後かな。

イメージ 1

南大塚は、西武新宿線の終点本川越のひとつ手前の駅。朝からの雪に期待して出かけたものの、昼過ぎからすっかり雨模様に。15時という時刻も相まって光量が気になるけれど、思い立ったが吉日というのかな…。

昨年5月31日付で廃止された西武安比奈線、駅前の案内板ではまるで現役のよう。

イメージ 2

ネットを探すといくらでも出てくるわけだけど、西武安比奈線入間川の川砂利輸送を目的として、南大塚-安比奈間3.2kmが1925年に開業した。その後1963年に休止となるも、安比奈付近に車両基地を建設する計画があったことから、その後54年間維持されてきた。

地図で見るとこんな。旧安比奈駅を再整備するという誤解もあるけれど、終点付近は河川法の制約を受けるため、旧駅から堤防を越えた東側の農地に整備する予定だった。

イメージ 3

廃止から1年近く経過したものの、倒壊の危険性のある架線柱を撤去したのみで、線路はそのまま残されている。駅を出てすぐ北側、将来計画の位置に移設された踏切に、列車が通る日はついに訪れなかった。

イメージ 4

最初に車両基地の計画が表に出たのは1989年、その時は300両規模で1997年完成予定とされていた。その後2008年、2018年と二度延期され、規模も200両に縮小、最終的には輸送需要の低下等を理由に、2016年2月10日に計画廃止が表明された。

西に90度向きを変えた線路は、その先で国道16号を横断(A地点)する。ここは地下化を基本に検討されていたようで、2012年の川越市議会でも話題に上がっている。

「記憶によれば、平成六年十二月に南台二丁目自治会から、(中略)軌道の一部地下化された場合の地上の活用の、そうした要望などが寄せられておりました」

イメージ 5

線路時期はバリケードが張り直されているが、場所によって脇が甘いのは地元対策だろう。撤去工事の影響か線路は明らかにひしゃげ、近隣住民の家庭菜園も一掃されて雰囲気はだいぶ変わっている。木製の枕木はほとんどが腐り朽ち果て、地球に同化していた。

イメージ 6

赤間川を渡るあたり(B地点)から地盤が下がり、あたりはがらっと田園風景に変わる。はじめて来たときはこの橋も歩いて渡れたものだけど、枕木の朽ちた今そんな状況ではない。整備後の新線はこの2本の水路を下越しし、その先は高架となる計画だった。

イメージ 7

維持をやめた人工物というのは、こうも簡単に自然に還っていくものなのかな…。50年間辛うじて鉄道施設としての体を為していたものが、ここ最近で一気に老け込んだように見える。線路敷の跡地利用ついては、市も検討しているが結論は出ていないようだ。

というか、跡地利用はイコール行政による西武鉄道の損失補てんであって、それ前提で検討が進んでいるのはまぁ行政と鉄道会社との深い関係を示しているのではと。

イメージ 8

安比奈線の中間部を占める「大袋」は古くからの農地帯で、いくつもの水路が帯状に流れることからこの地名になった。沿線風景も、未だその時代を色濃く残す(C地点)。

イメージ 9

路線の再整備にあたっては、車両基地周辺と中間付近に駅を設置するとして協議が進められていたという。中間駅の場所はいろいろと噂は出ていたが、2008年の市議会答弁によると、具体的な場所は公式には定まっていなかったらしい。

車両基地本体の事業がおくれておりますことから、場所の選定などの具体的な検討は行っておりません。」

まぁ、まとまった更地がひろがるこの辺(D地点)かな、と。知らぬ間に新しい戸建て住宅が増えているけれど、その売り文句に新駅の設置は入っていたのかなぁ…。

イメージ 10

安比奈線と言えば必ず出てくる池辺の森は、西濃運輸の基地ができてだいぶ切り開かれてしまった。期待した雪景色は残念に終わったけれど、雨の日のビニール傘とこひつじも撮ってみたかったので。

イメージ 11

森の出口付近(E地点)で、直進する休止線のほかに、左手に逸れていく線形が見えるだろうか。これが車両基地への分岐線であり、これより直進方向は放棄される計画だった。そのため、県道八瀬大橋の建設にあたって旧線の連続性は全く考慮されなかった。

イメージ 12

朝ドラ「つばさ」の舞台として一時期、観光用に整備された池辺用水橋梁。そもそもここは、再び列車が通る計画はなかったことになる。2007年に訪れた時にはそこそこ流れのあった用水路も、今では地形も変わってすっかり枯れ川となっていた。

イメージ 13

このあたりから、線路敷は様相を一変する。積極的に維持する気はもうなかったのだろう、もともとあった枕木に変わって、成長した枕「木」たちがあちこちで根を上げている。

イメージ 14

県道、「八瀬大橋南」の交差点付近から。左手が進入路として整備された道路で、車両基地の外周路ともども2013年に川越市道に認定されている。正面に見えるプラントから奥が基地の予定地で、このあたりは高架橋で越えていく計画だった。

イメージ 15

安比奈駅までは行かず(お察しなので)、ここで南大塚方面へ引き返す。野菜泥棒の看板がでる長閑なこの地に、駅ができたらどんな変化をもたらしただろうか。そりゃ今のこのご時世で考えれば、ネガティブな結果しか見えないけどさ…。

計画中止後も跡地利用や外周道路のサーキット化(笑)など問題は山積みのようだけれど、全くもって面白い話題が2017年の市議会で取り上げられている。

「改めて外周道路の現状を確認しておりましたところ、(中略)一部が狭山市の飛び地にかかっていることが判明いたしました。さらに詳細に調査いたしましたところ、道路法第八条第三項に基づく狭山市長の承認を得ていないことが明らかになりました。」

イメージ 16

道路法違反とか(笑 しっかりしてね、川越市

実は今日、めでたくない誕生日でした(笑 自分でケーキ買って帰ったら、家でもそれなりに用意されていて…。なんだか西友で見たものが多い気もするが…(笑

イメージ 17


西武安比奈線関連の過去記事