西武沿線完歩の旅(2007/9/2~12/16)その9
2007/10/21 芦ヶ久保→西武秩父 6.6km(歩行距離10.2km)
青空の下、峠のサミットを越えて、今日はとうとう仕上げの日。夜に阿佐ヶ谷で予定があるので間に合うよう、ちょっと早めに家を出てきた(笑
芦ヶ久保の駅前に広がる「道の駅 あしがくぼ果樹公園村」。秩父名産の物販、レストラン、情報施設のほか陶芸体験なんかもあるようで、ちょっとした文化交流施設になっている。秋のツーリングシーズンとあってか、今日の道の駅は大混雑。電車は空いてたのにな(笑
道の駅のレストラン。特製の手打ちうどんが売りということで、秩父の郷土食「ずりあげうどん」で昼食にする。簡単に言うと釜揚げうどんなんだけど、茹でたてのうどんを器に取り、薬味やタレで食べるまぁファーストフード。
麺はコシはないけどもっちりしていて、郷土料理ということで観光客(笑)としては満足感はある。先週入った駅前食堂と業種的には競合関係にあると思うんだけど、どうなんだろう?(笑
道の駅を出て横瀬川を渡ると、今日も国道を秩父方面へ向かう。線路は横瀬までトンネルが多く、一方で道路は尾根を大きく迂回していく。駅から離れると家一軒すらなくなり、緑の山中を横瀬川と一緒にただただ歩く。
横瀬川が「滝の枕」という急流で高度を下げるのに対し、線路は山腹にへばりつくような「渡らずの橋」で難所をクリアしていく。周辺はセメント輸送のトラック基地が多く、貨物輸送という面では因縁というか、残念な光景だ。
横瀬川を渡るこの橋が、芦ヶ久保と横瀬との字界となっている。このあたりから本格的に山も切れ、いよいよ峠越えの雰囲気が色濃くなってきた。
高麗の手前以来、再び歩道がなくなった国道に戦々恐々するも束の間、ついに道路の先に光が現れた。最後のカーブを抜けると、そこはたくさんの人が息づく横瀬の里。
武甲山を背にした横瀬の集落。横瀬川支流群の作る低地へ直線的に落ちていく国道に対し、線路はその高さを保ったまま築堤と橋梁でこれを渡っていく。さらに起伏の多い地形の中、線路は掘割と築堤を繰り返す。
越えてきた山々を振り返る。木々は少しずつ秋の装いをはじめた…。
三菱マテリアル横瀬工場のパイプラインが、頭上を跨いでいく。このパイプライン、地図で見ると2km以上離れた武甲山の中腹から延々と続いているようだ。
このプラントの傍らには1996年まで、東横瀬貨物駅が存在した。実態としては引込線で取り立てて施設もなかったが、今でも土地の平面形状や盛土などに、かつての貨物輸送の姿を想像することができる。
横瀬駅の左手前に位置する、横瀬車両基地。石灰石輸送のための貨車や機関車が集ったこの基地も、所属車両のいなくなった今では多くの線路が剥がされ、白い電車が構内の片隅で昼寝しているだけだった。
ガードをくぐって道なりに左へ折れ、坂道を上がると横瀬駅に到着する。
横瀬駅は、1993年にスイスの山小屋風の駅舎に改築され、町の玄関口にふさわしい小奇麗な駅になった。1998年に特急が停車するようになり、以降羊山公園の芝桜が知名度を上げるにつれ、秩父の観光拠点駅として定着してきているようだ。
横瀬から羊山公園への道は、過去に芝桜観光で歩いているので勝手知ったる感じかな。横瀬は秩父盆地の一部と分類されるが、秩父市街とは羊山公園の乗る尾根で隔てられている。その分、秩父とくらべ長閑な風景が残っているのが嬉しい。
先が見えてきたところで、帰りのレッドアローを携帯からネット予約。あとの予定があるから、先を急ぐよ(笑
14時30分 秩父市大宮
横瀬町の水源「姿の池」を過ぎ、いよいよ秩父市に足を踏み入れる。尾根に突き当たった線路は左にカーブしながらトンネルに入り、対して人は季節外れの芝桜の丘に登る。
5月の連休ごろには人が押し寄せるこの丘も、シーズンオフの今は地元の数人が散策や休憩をしているだけ。そんな時期だからこそ、来シーズンに向けた畑の手入れが着々と行われていた。
14時45分 秩父市野坂町二丁目
親子連れが遊ぶ羊牧場を過ぎ、紅葉のはじまった木々を横目に坂を下ると、トンネルを抜けてきた線路が足元から姿を現す。横瀬との標高差を埋めるため、線路は大きな右カーブを切って秩父市街地へと降りていく。
坂を下りきって国道を渡り、住宅地を抜けると終点の西武秩父駅はもうすぐそこ。
14時53分 秩父市野坂町一丁目
西武秩父は、ログハウス風の斜め屋根が印象的な駅。旧県立秩父農工高の跡地を利用して駅前広場ともども整備された。秩父鉄道御花畑駅が隣接するが、駅周辺は駅前からして基本的に住宅地となっている。
15時11分 秩父市野坂町一丁目
駅構内に整備された仲見世通り。秩父の物産店や飲食店が軒を連ね、ある意味西武秩父線の開業以来最も発展しているのはここだろう(笑 その後2011年の「あの花」のヒットで、物産店のコンテンツも飛躍的に強化された気がする。少なくとも、華やかな雰囲気にはなったよね。
しかし今日はシーズンオフで、人影もまばらな仲見世通り。
15時16分 秩父市野坂町一丁目
とはいえあまり余韻に浸る間もなく、15時23分発の「ちちぶ30号」で折り返す。電車は歩いてきたこの2か月を巻き戻すかのように、いつか見た風景を車窓に池袋を目指し駆けていく…。
最後に1989年の旅のスナップ写真から。仲見世通りがなく、御花畑駅への連絡通路から駅前がすっきりと見渡せた。車止め付近に点検用通路が設置されたため、現在ここから武甲山の姿は望めない。
池袋から西武秩父まで、営業キロベースで76.8km。これだけ苦労して歩いたわりに、まだ全線176.6kmの半分にも届いてない件(笑
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