美瑛・北十勝 晩秋と初冬が交錯する旅(2015/10/30~11/1)その5(終)

3日目 帯広→東京(2/2)

終点一つ手前の幌加駅跡には、ホームと僅かな線路が残されている。それにしても驚かされるのは、駅周辺に人の生きた痕が全く感じられないこと。いやほんと、クマが出そう…。

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1954年の洞爺丸台風による風倒木の処理で賑わったこの駅、周辺には最盛期350ほどの人口があったという。しかし風倒木の処理が終わるとともに人は離れ、かつての町は現在ではすっかり無に帰している。

幌加駅から隣接する旧「第五音更川橋梁」までは、廃線跡が刈り払われ散策路として開放されている。クマの糞がないか注意しつつ、手を叩きながら歩いていく…。

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コンクリートアーチの旅はこれで終わり。

幌加駅を後に国道をさらに10分ほど上ると、終点の十勝三股駅跡…と思わせる平場はその右手に唐突に現れる。アーチ橋群を丹念に案内していた標識もここにはなく、ナビに映し出された駅前らしい道形と、数軒の人家にピンときて慌てて車を寄せた風景がこれだ。

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大草原の小さな家、みたいな。

かつては森林鉄道の起点となり、人口も1,500を数えたという三股の町。北海道入植の歴史は鉄道の歴史であり、産業構造の変化と鉄道の斜陽化は密接な関係を持つ。人よりクマが多いような山の中だけど、当時は人が住み鉄道が敷かれた理由があったということだ。

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現在このエリアは大雪山国立公園に指定され、駅跡と周辺は植生回復を図ったうえで「必要最低限」の歴史教育施設の整備を検討するとしている。しかし、草木保護のために整備された木道は、既に朽ち果てていたり…。

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唯一の遺構である旧整備工場も壁や屋根が崩壊し、「歴史教育施設」としての活用より危険防止の取り壊しが現実的に見える。正直それでいいんだけど、でもかつてここに町があって、多くの人いきれがあった。その記録だけでも残してほしいとは思う。

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時計の針は14時を指した。今回の旅の到達点はこことして、帯広の街へ戻ることにしよう。

国道を引き返し、傾いてきた陽射しの下帯広駅に到着したのは15時半ごろ。少し遅めの昼食に、昨日目を付けておいた駅構内の豚丼「ぶたはげ」に入る。北海道最後の食事は、豚6枚が乗った「特盛豚丼」(1,200円)で。

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これは…ご飯も大盛りにしておけばよかったなぁ…(笑 香ばしく網焼きされた豚肉に、その味と香りを壊さない控えめなタレがまた食欲を誘う。常食するには高すぎるけど、店のこだわりを感じさせる旅行者には嬉しい一品だった。

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日が傾いてきた。最後に帯広駅周辺の紅葉を見てから、空港に向かうことにしよう。

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帯広市十勝平野南西部に市域を持つ、17万の人口を擁する道東の中心都市。人口は漸減傾向ながら急落中の釧路市に肉薄しており、「根室県庁」から始まった道東の重心は札幌に近づく方向でわかりやすく移ろっている。

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内陸に位置するこの地は、夏は暑く、冬は寒い。紅葉の盛りを過ぎるとすぐ、雪の舞う凍える季節がやってくる。

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広尾国道を南下して帯広空港前のニッポンレンタカーに返車、マイクロバスで空港入りしたのが17時20分ごろ。出発2時間前の空港は、窓口も休止中でがらーんとした空気。しばらく再開を待ってから荷物を預け、それからお土産を決めかねて物産店をぐるぐると回る。

レストランを覗くも心動くものがなかったため、売店でワインを買ってプチ打ち上げ。小人たちはどこ見てるんだか。

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到着便の遅れで搭乗が遅れたものの、ANA4768便(AIR DO運行)は定時の19時10分に帯広空港を出発する。機内は半分程度の搭乗で隣も空席のため、久しぶりの普通席ながら気兼ねがなくていい。離陸するとすぐ、ひととき夢の中へと落ちていく…。

そしていつもどおり、機内サービスの物音で目を覚ます(笑

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AIR DOは初めてなので試してみたくなって、フリードリンクは「じゃがバタースープ」を、さらに有料メニューから「AIR DOオリジナルスープカレー」(500円)をオーダー。これがすごくおいしかったけれど、隣の席がいたら遠慮して食べられない、そんな匂い(笑

夜空に浮かぶ飛行機から、遠く眼下に町灯りを見下ろして。あれが仙台の光かなぁ、じゃあ山脈の向こうは山形?とか、地図を見ながら「現在地確認」に興じたり。

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羽田空港到着は20時55分。手荷物を受け取ってから、モノレール浜松町、山手線池袋と経由し23時ごろ帰宅する。品川から清瀬に引っ越して、羽田空港は本当に遠くなった。間もなく北海道新幹線が開業するけど、北多摩住民には需要があるよ、きっと。

さて今回は、荷物が多かったことから絞りに絞ったお土産コレクション。

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ジンギスカンのジンくん」はよく考えるとブラックなんだけど(笑、クリアファイル好きもあって購入。六花亭札幌本店オープン記念菓「ひろびろ」(500円)は、職場で「それなりの(高級な)味がする」と好評だった。自分で食べてないけど(笑、定番のお土産に飽きた向きにはおススメの一品だと思う。

初めて訪れた晩秋の北海道は、荒涼として観光客も少なく寂しい限り。だけど孤独に身を置くことで、東京での自分を外から見つめなおすことができると思うんだ。旅に求めるのって、それだから。


タイムスケジュール(3日目)
8:40~9:10 朝食
10:00 チェックアウト
10:10~11:30 宿泊先→上士幌町
12:00 第三音更川橋梁
12:10 第四音更川橋梁
12:15 上士幌町鉄道資料館
12:35 三の沢橋梁
12:50 五の沢橋梁
12:55 タウシュベツ展望台
13:10 第五音更川橋梁
13:20 幌加駅跡
13:35 十勝三俣駅
13:55~15:25 上士幌町→帯広駅
15:30~15:55 昼食「ぶたはげ」
16:20~17:15 帯広駅~帯広空港
19:10~20:55 帯広空港羽田空港


この旅の記録