名古屋発 しなのの旅(2016/5/14~15)その2

1日目 名古屋→長野(2/3)

道路から見下ろす渓谷は、蛇行する犀川の支流、会田川と水田の織り成す風景。安曇野里山には、豊かな清流を背景にした棚田の伝統が今も伝えられている。

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安曇野市リーフレットによると、この道から長峰山方面へ脇道を右折するという。ところが脇道はたくさんあるし、標識もろくに整備されていないしで早くも辟易気味…。そのうちの1本に当たりをつけて、えいやと右折する。

しばらく斜面を上った高台の三叉路で、道祖神を見つけて少し安心…。

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安曇野道祖神が多い理由は、どうやらよくわかっていないらしい。集落の入口や道路の辻付近に祀られ、村の厄除けだったり子孫繁栄だったり旅の安全祈願だったり…村人の思いを一手に引き受け信仰されてきた。

そういうアバウトなところが、民俗信仰らしく身近で愛らしいところだ。

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それにしても陽射しの強い午後、ちょっとした木陰が心地良い。

三叉路を発つと、道はいよいよ山腹に取りつき高度を上げていく。道中には「クマ注意」の注意書きが目立つけど、どうやって注意すればいいんだろうね…。しばらく歩くと再び風景は開け、そこには小さな谷筋を開墾したとても小さな集落が現れる。

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ここ長嶺山の山腹は、高所に至るまで大小規模の棚田やその跡を見ることができる。それだけの水に恵まれたという一方で、車のない時代で町に下りるのは難儀だったろう。

時は田植えのころ。遠く北アルプスを望む山間に、農機の音がこだましていた。

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集落から少し上がった山道の、ほんの小さな平場に佇む二十三夜塔。先ほどの棚田の集落のものだろうか。ここから浮かぶ月を眺め酒を酌み交わすのが、古の人々の僅かな楽しみだったのだろう。

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明科駅に降り立って2時間。道路は次第にその斜度を増し、変化の乏しい林間をヘアピン状に上っていく。リーフレットによると山頂までもう僅かなはずと、そのカーブの先にゴールが現れる光景を何度妄想したことか(笑

目的地までの距離もわからず、重い荷物を持っての単調な徒歩行は精神的に堪える。

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山頂周辺でまた迷いながら、宿泊休憩施設「天平の森」に辿り着いたのは15時前。ここにきてようやくの水分補給で、折れかけた心を繋ぎ止める(笑 もし時間があれば、食堂や展望風呂も興味なくはなかったけど…。

木々の切れ間から山頂の展望台が姿を見せたのは、ここから10分も歩いたところだった。

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長峰山頂(933.5m)から見晴らす風景。まずは安曇野の反対側、初めに歩いた会田川の上流方面を望む。谷間に広がる田園集落と、斜面を削り続いていく長野道の姿。長野道はこの手前、ちょうどこの山頂の真下あたりをトンネルで抜けている。

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そしてこちらが安曇野側。左右に流れる犀川の向こうから、北アルプスを源とするたくさんの河川が合流している。その堆積物でできた平地が安曇野で、それ故多くの湧水に恵まれ、ワサビ栽培やニジマス養殖など清水を必要とする産業が発達してきた。

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写真奥を横切る谷をはじめとした地形は、静岡から糸魚川まで続く断層帯の活動で形成されたもの。細かい話はともかくだけど、北アルプスを含む奥の山々が西南日本で、足元の地面が東北日本という、地質学的に重要な境界ともなっている。

こひつじたちも山道を揺られて、風の通るここで酔い覚まし。

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時計の針は15時を回った。今日はまだ行先があったので、駆け足で山を下りることにする。

とは言え、リーフレットに示された下山ルートの案内は現地に一切ない。このバリケードのない通行止看板を見て、行くも戻るもきっと自己責任なんだろうなと解釈。それならもちろん、行く。

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携帯で現在位置を確かめながら、沢沿いを真っ直ぐに下りていく。これがまたけっこうな勾配で、下山は早そうでも逆方向だと心折れるだろう(笑 途中でこんな「道祖神ロード」と交わったりと、もうリアル宝探し状態…。

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やがて家々の屋根が近づき、ようやく山林を抜けられることにほっとする。それでも最後の最後にお寺の庭に迷い込んだりと、市のリーフレットには散々振り回された。

久しぶりに下り立った山裾の集落は、段のついた田圃に苗と水のある風景。

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明科駅に戻ったのは、出発から3時間と少しが経過した16時過ぎのこと。駅前通りの商業ビルや食事処は開店しているものの人影は少なく、車は通過するばかりで周囲はひっそりとしている。電車の時刻まで少しあるけれど、山登りで火照った体にこれはちょうどいいクールタイム。

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16時49分、長野行きの3両編成はここ明科を後にする。所要30分弱の姨捨で、こんどは途中下車してみよう。


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