名古屋発 しなのの旅(2016/5/14~15)その3
1日目 名古屋→長野(3/3)
明科を出た電車はいくつかのトンネルをくぐり、姨捨(おばすて)には17時16分の到着。斜面に広がる小集落の上段に位置するこの駅で、10人程度の降車があった。
この駅は、長野から松本方面へと向かう篠ノ井線が、最初の峠を越えるアプローチの途上にある。ホームが急勾配の本線から外れた平場にあるため、停車する列車は出発か到着の際に必ず、前進、後退、前進のルーチンを余儀なくされる。
そんな特殊な配線を生真面目に図化したのが、この駅名標だったりする。
そしてそんな駅名標の背後には、北海道狩勝峠、九州肥薩峠とともに「日本三大車窓」に数えられる、善光寺平こと長野盆地のこんな風景が…。
傾きかけた陽射しの下、平地の真ん中を蛇行して流れる千曲川。右手奥を横切る白いラインは、北陸への延伸成った旧長野新幹線。こんなホームで電車を待って、毎日通勤、通学とかいいよね。
右手方に視線を移すと、本日縁深い棚田たちの姿も。次の電車まで約1時間、ちょっと往復してみよう。
駅からしばらく線路沿いを歩き、松本方の踏切へ。ちょうど大月行きの電車が到着するところで、折り返し作業のため警報機は鳴りっぱなし。それを当然のことながら、人も車も忍耐強く待っている。そんな姨捨の、日常風景。
踏切を越えるとその先の斜面に、無数の棚田が広がっている。
姨捨の棚田は1,500枚とも2,000枚とも言われ、稲作が主流となった16世紀半ばから発展してきたという。更級川上流に作られた大池から導かれた用水が、上から下へ順々に棚田を潤し、「ガニセ」と呼ばれる排水路を通じ千曲川へと注いでいく。
古くは古今和歌集に詠われたという姨捨の風景、維持していくのは大変だろうけど。
踏切につかまったらたまらないので、早めに駅へと戻る。「姨捨」というのも想像掻き立てられる地名で、駅にも棄老伝説を解説した案内板が立っている。一方で地形由来の説もいくつかあって、まぁそのあたりが正解なんじゃないかとは思う。
駅からの眺望は特に夜景が美しいというけれど、いちばん日が長い時期だからな…。
姨捨駅はJRも観光開発に力を入れているようで、ホームから張り出した展望スペースが設けられているほか、来春までに本格的な眺望施設を整備する予定だとか。今日もホーム上にはカメラを抱え、ただ日暮れを待つ幾人かの姿が見えた。
少し遅れ気味の長野行きが、くたびれた様子で迎えにきた。
長野駅到着は18時53分、駅にほど近い線路沿いの「チサングランド長野」にチェックイン。楽天ポイントで半額にした(笑)ホテルだけど、部屋は広くウェルカムドリンクもあってようやく一息。その間、「一人飲み 長野」で検索するもあまりピンと来ず。
19時半ごろホテルを出て、駅までの道のりで何軒か覗いてみる。結局、何だか面倒になって、長野駅ビルの駒ヶ根ロースかつ丼の店「明治亭」に入る。
かつ丼屋のそばもどうかと思ったけど、「旅先では最高のものを頼みましょう」の方針?に基づき「信州御膳」(2,500円)をオーダー。あとは伊那谷中川村の地酒「今錦」(950円)の熱燗と、勝手についてくるお通しは本日豚しゃぶで(300円)。以上、全て税別。
ソースに浸されしっとりとしたカツに、敷き詰められたキャベツの食感とさっぱり感のバランスがいい。あっさりとした馬刺しに、そばもコシがあっていい茹で加減。ついついお酒がもう1本入ってしまう…。しなのの国のおいしいものたち、お腹いっぱい食べられるなんて最高だ(笑
メニューを見ると信州野菜のかき揚げ、信州味噌で焼いた牛タン、テイクアウトでは信州牛も扱っているようで、そちらも興味そそられるなぁ。
1時間半ぐらい居座って、撤収。線路沿いの細い通路をホテルに戻り、窓から線路を見下ろして再びウェルカムドリンクで一息。けっこう疲れてるはずなんだけど、旅先の最終日って夜更かししちゃうよね…。
明日は牛に引かれて、東京へ。
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