伊豆長岡 青空の散歩道(2014/12/5~6)その3(終)

2日目 伊豆長岡→東京(2/2)

青い空に、厚い雲が目立つようになってきた。

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15時前に沼津駅に戻ると、ちょうど下り電車が出るところだったので、パスモで改札を抜け駆け込み乗車。雲隠れしている富士山のそれでも近くに行きたいと、裾野に広がる富士市を目標に名所をちまちまと検索する(笑

電車が西に下るにつれ、車窓には次第に富士山の影が近づいてくるよう。富士のひとつ手前の吉原で下車、ここで岳南鉄道に乗り換える。

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かつての貨物扱いの側線が残り、ローカル感いっぱいの吉原駅跨線橋下の赤い車両が、井の頭線の中間車の両端に運転台をくっつけたという、おもちゃのような岳南鉄道の単行電車。これが30分ごとに発車していく。

窓口で比奈までの切符を購入し、無人の改札をくぐって乗車。8名の乗車で吉原を出発した電車は、吉原市街に位置する吉原本町、本吉原で座席が軽く埋まる程度まで乗客を増やす。

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吉原の工業地帯を時計回りに4分の3周する岳南鉄道線は、1953年に吉原~岳南江尾間9.2kmが全線開業した。沿線の製紙工場をはじめとした工業製品の輸送で活況を呈した時期もあったが、それも2012年に廃止され、わずかな旅客輸送だけが残った。

比奈までは所要13分250円の旅。最後の貨物積み出し駅となった比奈駅の構内は空しくがらんとしているが、周囲の工場は変わらず煙突から煙を吐き続けている。

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古びた駅舎を抜け、目的地の竹採公園までは北に15分ほど。駅前には日本製紙、明治製紙、市川製紙と見事に製紙工場が立地し、厳密には違うかもだけど小学校で習った「コンビナート」という言葉を思い起こさせる。

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駅周辺の道路は狭く、しかし車社会らしく交通量は多いため歩きづらい。信号のない交差点で県道を横切ると、道路は緩やかな上り坂に変わる。沿道は住宅地が続くが、その頭越しにいよいよ富士山が威容を現してきた。

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ここ富士市内から富士山を望めるのは年200日程度という。右奥に写る中学校の学び舎からは、日々表情を変える富士山の姿が拝めるのだろう。

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またしても詰めの甘い案内標識に迷いつつ、中学校前を右手前に折れると、住宅地と向き合った山裾の斜面に竹採公園があった。

富士市の「定番スポット」と紹介されるこの公園は、全国数多い「竹取物語」伝説の地のひとつ。公園の入口には「富士に伝わる竹取物語」という、縁起を説明する看板が立っている。

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「ここ中比奈、竹採公園には『竹採姫』と刻んだ自然石の小さな塚があり、古くから翁と姫が住んだところと伝えられています」「『比奈』の地名も平安時代の『和名抄』にある『姫名郷』にかかわるものとされ、かぐや姫との関係を暗示させ、物語発祥の雰囲気を漂わせています」

細長い土地に竹林と遊歩道が整備された園内には、「竹採塚」をはじめ「国司の庭」や「見返し坂」などが点在しているが、詳しい説明がないため関連性はよくわからない。

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階段を上って奥まで歩くと、突き当たりは住宅に囲まれた小さな平場。水のない「大池」やみかんの木が植わっている程度で、地元の人にも観光客にもなんだか微妙な公園だ(笑 竹林の風情とか、夏の昼間なんかだとまた違う表情があるのかもしれない。

時計も16時を回って陽も傾いてきたところで、来た道を比奈駅へと引き返すことにする。ふと振り向いて眺める富士山は、すっかり茜色の雲に覆われていた。

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静けさに包まれた夕暮れの駅では、3~4人の旅客が電車を待っていた。構内踏切を渡った舗装上には「富士山ビュースポット」という標示がなされており、晴れていればここからも富士山が望めるのだろう。

猫は寝床に帰るのか、それとも夜のお仕事なのか。線路の上を悠々と去っていく…。

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再び1両きりの電車に揺られ、吉原に戻ったのは17時前。東海道線で隣の富士駅に移動し、駅前から乗客1名のバスで新幹線新富士駅に向かう。

新富士駅は1988年に開業した請願駅で、簡素な平屋建ての駅舎に人影は少ない。東京までの乗車券を確保したあと、売店でお土産と、時間が早い気はしたけれどお弁当を購入。旅先でお弁当選びに迷うのは、ちょっと贅沢で幸せな時間だ(笑

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17時36分発「こだま666号」に乗車。途中で「のぞみ」や「ひかり」に追い抜かれながら、のんびりと東京を目指す。駅で買ったお弁当「竹取物語」を開封するも、電車がけっこう揺れて中身の写真が上手く撮れなかった…。

竹籠の容器から掛紙を外すと、筍、栗、帆立、桜海老などがびっしり敷き詰められた、富士市名物茹で落花生のおこわが姿を現す。郷土食豊かな食事は、旅人にとって何事にも代えがたい。

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多摩川を渡り大井町線を越えて、品川駅到着は18時40分。京浜東北線に乗り換え19時過ぎに帰宅するも、このあと予定が入ったため荷物だけ置いてすぐに渋谷へ。結局、最終的に帰宅したのは終電だったような…。

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いつからか、静岡土産は一択で「こっこ」になった。こぴよ達の入っている籠が「竹取物語」の外容器で、断捨離できずに持ち帰ってきた。これはまさに、「籠の中の鳥(こぴよ)」(笑


この旅の記録