惜別品川区! 荏原町商店街から仲通りを歩く(2015/9/12)その1

昭和7年の道路地図に、松原橋で交差する計画線が環七通りと第二京浜荏原町の南、「馬込町」と書いたあたりは真っ白だけど、これは当時耕地整理事業中だったからだろう。このエリア、当時道らしい道は「中通り」と呼ばれるオレンジ色の線1本だけだった。

何とも、歩いてみたい空白地帯だとは思わないかな!?

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中通りは「田無街道」とも呼ばれ、尾根伝いに中原街道池上通りとを結ぶ約4.5kmの古道。平塚橋から荏原町間は終電を逃した際に何度か歩いたので(笑、今日は荏原町駅脇のこの踏切をスタートとしようか。気持のいい青空だけど、もう暑くはない。

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荏原町駅の正面方には、交差点を中心に十字型に「荏原町商店街」が形成されている。その南北のラインが件の古道であり、「中」が「仲」に変化はしているものの現在でも「なかどおり」を名乗る。

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今日は踏切反対側にある旗岡八幡神社例大祭ということで、商店街は華やいだ雰囲気でいつも以上に活気が溢れている。そしてこれが過ぎると、いよいよ秋到来だ。

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暗渠化された立会川を渡ると、その先で商店街から右斜めへ細い道が分岐していく。その角に建つマンションを削り取るように、そこには庚申堂とすっかり風化して判読の難しくなった石の道標が立っている。

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辛うじて「天明三年」(1783年)と読める道標には、「右うの木(鵜ノ木)光明寺道、左池かみ道(池上道)」と刻まれ、辿ろうとする古道が左手方向であることが示されている。

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商店街の道は立会川の流れる低地から、緩い坂道を上がっていく。ゲートの後方に見える信号が荏原町と馬込町との境界で、現在でもここが品川区と大田区との行政境になっている。そこを越えると道は、先ほどの「空白地帯」へと入っていく。

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その前に左手の鶏から揚げ専門店「丸吉」にて、「荏原町コロッケ」(120円)を2個購入(笑 まぁ「腹が減っては」とも言うからね。

荏原町商店街も戸越銀座と同様に、「E(荏原)級グルメ」として「荏原町コロッケ」を展開している。現在14店が参加しているというが、どうも居酒屋メインで食べ歩きの店は多くない。

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店のすぐ裏手にあるその名も「庚申公園」で、暖かいうちに頂いてしまおう。ずっしりと重い荏原町コロッケ、中にはコーンやタマゴ、ハムなんかが挟まれており、味もまとまっていてなかなかおいしい。まぁよくスーパーでも、こんなお惣菜売ってたりするけどね。

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交差点が近づくにつれ、道はその幅を異様に広げてくる。町境となる「荏原町駅入口」の変則6差路は、各方面への結節点として古には旅人達の休息や賑わいの場となっていたのかもしれない。

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この交差点にも石の道標があり、天保二年(1831年)というから先ほどのより50年ほど新しい。「東 品川道」「西 せんそく・おくさハみち」「南 いけかみみち」「北 めくろみち」という文字がまだはっきりと判読できる。

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荏原町商店街はここで終わり、交差点を渡ると代わって「馬込本通り協栄会」が始まる。荏原町駅に近いことでそこそこ人の流れがあり、懐かし書名を掲げた古びた書店も頑張って営業しているようだ。

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道は「馬込北台」と呼ばれる、古道の第一ピークへと上っていく。その頂点付近に立地するのが、1976年開山の曹洞宗系単立寺院宗福寺。緑の多い落ち着いた境内には、1935年に犯罪により命を落とした少女を祀る「登志子地蔵」が安置されている。

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道は一旦緩い下り坂に入り、このあたりから商店街も「馬込三本松商店会」へと変わる。しかし、恐らく1968年の都営浅草線西馬込開業が契機となったのだろう。人は坂下の第二京浜へと流れ、看板建築の並ぶ商店街はすっかり寂れてしまったようだ。

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カーブの手前で振り返って見る風景。最近まで戦後のドサクサ感を漂わせていた荏原町駅前の一角は撤去され、2015年度末完成を目指しいよいよタワーマンションがそのピークへと近づきつつあるようだ。上空から見下ろす下町の風景は、いかがなものだろうか。

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緩やかにカーブする道の先に、2014年に架け替えられたばかりの、環七通りを跨ぐ新馬込橋が見えてきた。

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橋上から眺める東側の風景。歩道橋の奥に隠れているが、ここが第二京浜と環七通りが交差する、「日本初の立体交差」松原橋川瀬巴水が「馬込の月」に描いたように、「松原」というのは当時の風景そのまんまなんだろう。今や大気汚染の代名詞だが…。

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新馬込橋を渡り切った古道は、第二京浜との合流に向け再び高度を下げていく。

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