遠野 落穂拾いの旅(2016/11/11~13)その3

2日目 遠野(2/3)

郊外に出る前に昼食をとお食事処を覗いてみるも、朝食を食べ過ぎて食欲の湧かないいつものパターン(笑 夕食をおいしくいただくために自重して、結局その足で駅へと向かう。

遠野駅は、1950年に建築された風情ある駅舎が特徴。しかし老朽化と合理化のため建替える計画があるそうで、この姿も見納めかもしれない。

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駅向かいの遠野市観光協会「旅の蔵」で、午後の足となる自転車を借りる。17時閉店とのことで、許された時間は3時間ちょっと。それにしても自転車に乗ること自体5年ぶりなので、そこがいちばんの心配だったりする。

若干ふらつきながら(笑)商店街を抜け、駅東側の陸橋で釜石線を越える。陸橋の左右には古レールで組まれた人道橋が架かり、これがなかなかいい味を出している。

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遠野における鉄道のルーツは、1914年に開業した岩手軽便鉄道まで遡る。1950年に国鉄釜石線として整備を行った際、改良新線が市街地を分断することからこの橋が架けられた。駅舎ともども、維持修繕を行いながら今日まで役割を果たしている。

道路は早瀬橋で、お盆の花火大会会場となる早瀬川を渡る。

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遠野バイパスの交差点から、道路は片側歩道の国道に変わる。次第に広がる田園風景は秋の収穫を終え、ひっそりと冬の訪れを待っているよう。

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午後の落穂拾いその1(笑 国道脇に佇む「追分の碑」は、三陸は大槌に至る古の交易ルート「塩の道」と、霊峰早池峰山に至る「信仰の道」との分岐点を示したもの。街道沿いに発展したこの地域には、この手の石碑が多く残されている。

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遠野っていうのは、「襟裳岬」以上に何もない田舎だと思う。落穂拾いその2の「五日市のキツネの関所」に至っては、小さな平場に案内板が立っているだけなんだもん(笑 そりゃキツネに化かされたわけだから、何もなくて当然ではあるんだけど。

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ただ、そんなありふれた風景を味わい深くしてくれるのが、この地に伝わる「民話」というスパイスなんだとも思う。遠野を旅するには、想像力が必要なのかも。

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開放的な国道バイパスから見覚えのある支道を見つけ左折すると、風景は対照的に田舎の雑然としたそれに変わる。小川を渡った先にあるのがカッパの狛犬で知られる常堅寺で、その前のスペースに自転車を止める。

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1490年創建の常堅寺は、カッパ淵に棲むカッパが火事を消し止めたことから狛犬にしたという、そんな言い伝えのあるお寺。そのカッパ淵は、境内を通り抜けた裏手の、こんもりとした木立の中にある。

8月の台風被害の復旧工事に伴い、水位が下がっているというカッパ淵。ふだんは膝下ぐらいの水深はあると思うけど、今は見た目半分もない。木々の落葉の時期と相まって鬱蒼とした雰囲気はなく、これじゃあカッパも隠れるのに難儀するだろう。

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今日も「カッパ捕獲許可証」を持った親子が胡瓜をくくった釣り糸を垂れていたけれど、そんなわけで「底突き感」があって可哀そうだった(笑

カッパ淵の木立はすぐに終わり、そこを抜けると何てことない田舎の風景に戻る。小川はこの先も田畑を潤しながら、猿ヶ石川へと注いでいく。

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止めてあった自転車を拾い、来たときとは反対の伝承園側に抜けてみる。伝承園は旧来の遠野の文化を凝縮した定番観光施設だけれど、今日は立ち寄らずさらに郊外へ、遠野盆地のどん詰まりを目指して走ってこう。

2013年に土淵バイパスが開通するまでは、歩道のないこちらの通りが国道だった。沿道の古びた看板建築が、かつての街道筋の面影を留めている。

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道は郊外に差し掛かるにつれその傾斜を増し、ペダルの一漕ぎがいよいよ重くなってくる。そして時計の針も15時を回り、背中からは夕暮れが追いかけてきた。

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国道と別れると道路は、完全に峠へと相対していく。ここ「土淵町山口」は、その名のとおり人の住む「里」と神々の領域である「山」との境に位置する集落。15基の石碑が並ぶこの辻で分岐する小国街道と大槌街道は、それぞれ峠を越えていく道だ。

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遠野駅から12kmほど。地元のおばちゃんの「大変だねぇ」的な声掛けに作り笑顔で返しつつ、最後は自転車を押して、歩いて、ようやく辿り着いた「山口の水車小屋」。これより上は数えるほどの民家があるだけで、その先は完全に山中へと吸い込まれる。

水車小屋は昨年度解体修理が行われたばかりで、くすんだ風景の中いやに浮いていた。地元利用と観光の二兎を追った結果だけれど、2年も経てば落ち着いてくる設計だそうな。

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夕暮れに加え「旅の蔵」の閉店時刻が気になってきた。ここまで来れば基本、あとは下り坂。もう少しだけ落穂拾いをしつつ、遠野駅方面に引き返していこう。


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