道東 台風と秋の旅(2018/9/27~30)その4
2日目 根室→網走(2/3)
なんか、空が、すごい。
オホーツクの海にゼンマイのように突き出した、日本最大の砂嘴、野付半島。
付け根付近を除き今は無人のこの地だけど、千島列島への交易拠点だった時代には「キラク」という街が存在していたという。江戸期まで遡るような話ではあるけれど、当時の墓所など、僅かながら痕跡があるらしい。
前回訪問から6年が経過して、目に見える違いと言えば無粋な展望台…じゃなくて津波避難施設ができたぐらいかな。ほかにはビジターセンターと、漁業関連の小屋がぽつりぽつりと建っている程度。
砂嘴の先端にあるトドワラへ、原生花園の道を行く。とうに盛りは過ぎた花園ではあるけれど、それでも小さな花々が数多く咲き残り、灰色がかった風景に彩を添えている。
まぁ、花の名前に詳しいわけじゃないんだけど。
海の中ながらそれほど風はなく、上着一枚でちょうどいい気候。旅行者を乗せたトラクターバスが、たまに砂埃を上げ通り過ぎていく。
真っ赤なハマナスの実も。背後に映る海は、今日はどこまでも穏やかだ。
20分ほど歩いて、トドワラの入口に到着。ネイチャーセンターからのトラクターバスもここが終点で、この先は徒歩での探索のみが許される。
野付半島の先端近くは環境保護のため、地面に直接降りられるとことはごく少ない。架け替えられたばかりの真新しい木道から、見下ろして歩くことになる。木道の上には、人影が2つ3つ…。
初夏から秋にかけて運航される、観光船の桟橋へと続く道。果てしない。
分厚い雲の隙間から、光のカーテンが降りてくる。
立ち枯れたトドの木が作り出す奇観は、訪れるたびに確実に土に還っている。それ以前に、砂嘴を形成する砂の流失や海面上昇等により、野付半島自体の存続が危ぶまれているという。
日本でいちばん早く沈む夕日が、次第に傾きを増してきた。
光のあるうちに戻ろうかと振り向いた矢先、視野の片隅を横切る生き物の姿。お魚くわえたドラネコ…じゃなくてキタキツネ! 人影を気にする様子もなく、魚を飲み込むと木道沿いを導くように歩き出す。人間に馴れているというよりは、逃げ足に自信があるのだろうか。
そしてたどり着いたのは、トラクターバスの折り返し場所。これは、早く帰れということなのか?(笑
そんなキタキツネもいつしか草の中に消え、どうも流れで帰ることになってしまったようだ…。往きに来た道をとぼとぼ歩いていると、こんどは背後でがさっという物音が。人かと思って振り向いてみると、なんとこんどはエゾジカの姿! なんだか今回の旅は、やたらと動物に出会うなあ。
それにしてもシカっていうのは、ほんとに跳ぶように走るんだね…。
夕暮れが近づく野付半島、ここに来たことだけで、北海道に来て本当によかったと思えるような時間だった。
時計の針は17時をまわり、ちょうどいい頃合いになった。今日の宿泊地、網走を目指そう。
次の記事
この旅の記録
野付半島関連の過去記事