七里ヶ浜 紫陽花と草の想い(2015/6/20)
梅雨の合間に訪れた、奇跡のような青空の日。
藤沢駅構内のカレーステーション。「ステーションカレー」大盛り(640円)、藤沢に来るといつもここだけど写真は初めてだったな。ミートボールが二つ浮かんでいて、特筆するほどじゃないけど懐かしくてほっとする味。
藤沢から江ノ電に乗車する。例年この時期、江ノ島から東の区間は大混雑。全線単線も相まって、電車の遅延はもはや風物詩だ。25分ほどかけて、15時過ぎに七里ヶ浜に到着する。
電車は駅の東側で行合川を渡る。橋の下のアジサイは、昨年より花をつけていた。
駅から国道を渡って、行合川河口付近の浜辺へ。護岸工事の重機が出ているほかは、いつもと変わらないこの景色。来月になれば、より多くの人たちで賑わってくることだろう。
たまには逆の角度から。相模湾の向こうには、遠く三浦半島が浮かんで見える。なんでみんなこう、何にもない海を眺めていたくなるんだろうね。
砂浜から上がって、今日は海沿いの国道を少しばかり東へ。その先で踏切を左折した、鎌倉プリンスホテルと七里ガ浜高校の間の直線路が、「七高坂」と呼ばれるところ。江ノ電越しに見る相模湾の風景は、このエリアを代表する景観だ。
七高坂を上り切ると、道はその先で西武七里ガ浜住宅の基線を為す緑道へと変わる。アジサイの名所と呼べるほどではないが、鎌倉でアジサイと言って何も明月院に殺到するばかりが脳でもない。
アジサイの見ごろはこれから7月頭にかけて。来週にはもう少し、はっきりと色づいてくることだろう。
だいぶ七里ガ浜住宅に深入りしてしまったな…。最終目的地が鎌倉高校前のため、ここで一旦行合川の谷底へ下り、西側の斜面から尾根を越えていくこととしよう。
すっかり開発された東側とは対照的に、西側の斜面はよく緑が保全されている。低地に密集する住宅群を横目に、道路は鬱蒼とした風情の中細かな曲線を描いて続く。
そんな道路が突き当たったところ、七里ガ浜浄化センターの裏手には、鎌倉広町緑地の散策路が不安げにその口を開けていた。
鎌倉広町緑地は、宅地開発の計画があったこの地を市が買い取り、以降ほぼ手つかずの状態で保存しているもの。濃い木々の中には散策路が設置され、NPOにより管理されているという。ただそこを歩く人は、それほど多くはないようだ。
散策路に足を踏み入れたがいいものの、顔にかかる蜘蛛の巣に留まらず、時に不明瞭な踏み跡に断崖絶壁に追い込まれてみたりと、これはちょっとワイルドな森林浴だ。
海抜50mほどの外周路を歩いても、視界が開けるのはほんの一瞬だけ。相模湾を望むこのお立ち台からは。長細い鎌倉プリンスホテルの建物や、綺麗に区画された住宅地を見渡せる。
30分ほどで緑地を抜けると、そこには見慣れた高台の住宅風景が広がる。人の手により拓かれた土地と、人の手によりそれが留められた土地。整然と雑然との境目とでも言えようか。
住宅地を貫く道は、やがて断崖へと突き当たって終わる。鎌倉の西を固めるこのあたりは、小さな河口部のほかは切り立った海食崖となっており、国道や江ノ電は足元の僅かな平場に肩を寄せ合うように続いている。
江ノ島を眺める草の想い…。なんだか今年は生い茂っているようだけど。
急な坂道を下って行くと、少しずつ俗世間に足を踏み入れる感覚に襲われる。それにしても何なんだ、この人出は…(笑 最近の鎌倉はアジア系の観光客が増えているという。確かにこの集団も、日本語とは違う言語を話しているようだったが。
鎌倉高校前から江ノ電に乗るも、混雑に負けて次の腰越で下車…。そこからモノレールの湘南江の島駅まで、江ノ電唯一の併用軌道区間を歩く。夕方になって、少し雲が出てきた。
帰りは大船から横須賀線で。西大井で降りると、雨上がりのような雲がうっすら夕日に染まっていた。梅雨明けは7月下旬かな…それまではきっと、夏は臆病者のように出たり入ったりを繰り返すんだろう。
その頃にはもう、自分はこの町にはいないんだろう。
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