七里ヶ浜 草の想い(2016/6/25)その2
鎌倉高校前の踏切脇から丘を上り数分、未だ頂上はあんな高みで青空と同化している。この高度差を、階段を利用して一気に詰めていく。
丘の上から望む、青い空と海の風景。さっき歩いた国道がもう、足元にあんな小さく。
毎年江の島を望むこのスポットだけど、今年は暑かったためか草の生長が激しく視界を遮る。環境破壊や斜面防災を危惧して鎌倉市が買い上げたここ七里ガ浜緑地、というか崖では、緑の草たちが「自然なまま」で今日も江の島を見つめている。
谷底のわずかな平地を埋め斜面を駆け上がる戸建住宅群。こんな風景が、七里ヶ浜っぽいなぁと思うんだ。
住宅地の背後にぽっかり開いた入口から、今日も鎌倉広町緑地へ。開発計画に対し市民運動が盛り上がり、最終的に市が買い取り都市林公園として整備されたこの緑地。宅地化以前の風景を保存する、さしずめ七里ヶ浜のタイムマシンとでも言ったところか。
そもそもここ周辺は、川の流れる低地に牧場や水田が位置するほかは、全くの緑に囲まれた土地だった。昭和21年の空中写真(国土地理院ウェブサイトより)を見ると駅周辺に目立った建造物はなく、写真左端でようやく鎌倉高校の造成に着手した程度だった。
それが昭和38年には大規模な宅地造成が始まり、既に右手の丘陵は原型を留めていない。白く削り取られた山肌が、いかにも痛々しい。
結局「環境保全」というのは「いつの時代の環境を保全するのか」という設定が重要であって、このあたりではそれが「ほどよく宅地化された住環境」だったんだろうと思う。たとえそれが、これだけの緑を踏みにじっていようと。そんなことを考えながら、かつての里山の道を歩く。
人っ子一人いない森の中には、蝉しぐれが降り注ぐ…。町を見下ろすベンチを見つけ、セブンイレブンで買っておいたパンで軽く昼食。
案内板に従って緑地を大きく一回り。尾根の道はそこそこ快適ながら、谷底に下りると最近の雨もあって、泥濘にたびたび足を掬われそうになる。
いくつかの谷筋が合流し、やがて空が開けると、公園らしく整備された一角にたどり着く。
「御所谷」と呼ばれるこのエリアでは、せせらぎや田圃のある、かつての生活環境が再現されているという。それは昭和21年の空中写真にあった、まさしくあの風景なのだろう。
今では住宅にとってかわられた、どこにでもある田舎の風景。
6月のカレンダーの写真を撮りにきたことを、ここでようやく思い出す…(笑
緑地を抜けて行合川を渡り、隣の丘の中腹に位置する西武七里ヶ浜住宅地へ。住宅地を横断する道路には黄色い車止めが置かれ、歩行者専用とすることで住環境の保全が図られている。この町は住民協定も厳しく、それが住民同士の軋轢の種にもなっているという。
小規模な商店が並ぶ遊歩道には、僅かながらアジサイが咲いていて…。
丘を下ると遊歩道はいつしか車道へと変わり、そのまま「七高坂」へと続いていく。ドラマやMVの撮影で有名になったこの踏切を、傾きかけた日差しの中、2両の電車が通り過ぎていく。
さようなら七里ヶ浜、また来る夏の日まで。
以下番外(笑
帰りは藤沢に出て湘南新宿ライン。1898年創業の「大船軒」は戦前から大船、藤沢両駅で駅弁の立ち売りを始め、今もこのエリアの駅弁販売を牛耳っている。そんな大船軒の名物と言えば、かつて江ノ島近海で大量に獲れたという鯵を使った「鯵の押寿司」(960円)。
見た目に美しいし鯵の旨味がしっかり出てて、お酢にちょっと癖があるけれどそれが大船軒の個性なんだと思う。何度でも買ってしまう、たぶんいちばん食べてる駅弁がこれ(笑
この旅の記録
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