坂戸 河津桜の終わりと農村の風景(2016/3/19)

「坂戸と雨と河津桜」、当初そんなタイトルを想定していた…。

川越市から東上線で3駅、坂戸市若葉駅に降り立ったのは13時ごろだった。東口でバスの時刻を調べると、60分サイクルのど真ん中という間の悪さ。地図を見ると4kmぐらいだから、この際たまには遠足をしてみよう。

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北東へと真っ直ぐに伸びる駅前通りの沿道は、ベッドタウンらしく団地や公園が続く。途中コンビニに寄って、食いっぱぐれ防止のため食料を調達。いつしか朝からの雨はすっかり上がって、汗ばむほどの陽気になった。

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団地街はやがて工場地帯に変わり、30分も歩くと香ばしい農村の風景が広がってくる。いつしか道は、1954年に消滅した旧勝呂村の領域に足を踏み入れる。

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武蔵野の農村…個人的にはすごく好きな風景なんだなぁ。新坂戸変電所が付近に立地しているため、このあたりには数多くの高圧鉄塔が集まっている。

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春風に揺れる菜の花。人がいると思ったら、そのうち1人は何だかリアルな案山子だった。

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携帯の地図を頼りに県道に出ると、交差点に「すみよし桜の里」を示す捨て看板を見つける。駅から1時間歩く物好きもいないんだろう、これが初めて見る案内だった。

看板に従い県道を折れ、いかにも川辺に出そうな緩い坂を下りる。前方の視界を横切るくすんだ色の並木たち…先週だったらまだ、ピンク色に見えたんだろうか。

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もう九分九厘終わった感じの河津桜。一昨日の新聞に「早くも満開」っていう記事が出て、今さらおかしいなとは思ってたんだけど…。それでも残った僅かな花を探して、歩く。

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河津桜は越辺川の支流、谷治川と飯盛川の合流点付近の堤防上に植えられている。川向こうには家一軒ない広大な耕地が広がっており、たくさんの高圧電線が空を渡っている。花だけじゃなくって、そんな広々とした長閑な光景にも心癒される。

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このこひつじの表情、何と読む?

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護岸はところどころ階段状に整備されており、流れの近くまで下りることができる。そんなコンクリートの上にお店を広げて、少し遅めのランチタイム。

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16時を回って、次第に陽が傾いてきた。それとともに風が出て、3月下旬と言えどじっとしていると少し寒い。

飯盛川は平成のはじめまで小水路のような河川だった。それが度重なる氾濫から、ほぼ全線に渡って改修が施された。真っ直ぐな流路に面白みはないけれど、この水と、緑と、空に浮かぶ月の風景は、古の時代から大きくは変わっていないんだろう。

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さて、帰ろうか。

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直線距離では若葉より北坂戸が近そうだったので、谷治川沿いの遊歩道を上流に向かって歩いてみる。少し経つと周辺には再び建物が増え、水流は街中へと吸い込まれていく。

でも、そこここに自然の光景は残っていて…。

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駅までは1時間程度の道のり。市街地に入る手前で、コンクリート護岸に固められた飯盛川を渡る。完全に都市河川の趣きで、お昼を食べながら眺めた長閑な流れとはなかなか結びつかない。

坂戸の町は、八王子から日光に至る街道の宿場町として発達した。坂戸駅の歴史が東上線延伸の1916年まで遡る一方で、川沿いの低地にあたる北坂戸駅の開業は公団北坂戸団地が建設された1973年のこと。

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改札口に貼られたポスターによると、坂戸では桜祭りが今日開幕だという。その裏側で、ひっそりと閉じようとしている河津桜を見てきたわけだけど…。

その寂しさに身を預けるのもまた楽し、なんだよね。


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